金管楽器の吹きやすさと鳴らしやすさの要因 ・・・(3)
4.アンブシャーの影響
・ 管楽器と歯の健康の関係について
ジャズトランペッターの日野皓正(一九四二年生)氏は次のように言っている。
「歯の無い前衛のトランペッターというのもいるんですけどね。でもやっぱり唇の格好と歯の形がよければ、トランペットの音が鳴りやすいですね。それが悪いと上手に音がでない。金管楽器の奏者たちは、最初に歯の矯正をするそうです。交通事故に遭って、歯が折れたら、音がうまく鳴らなくなってしまったという話も聞きますね。何ミリか歯の位置がずれただけ、歯の厚みがほんの少し変わっただけでも音色は変わってしまう。僕は万が一のために自分の歯型の石膏を2セット持っています。・・・・・スキーやゴルフで遊ぶときにも、あまり歯をくいしばらないように気をつけています。寝るときは歯ぎしり防止用にマウスガードというのを作ってもらってガードしています。・・・・僕の目標のひとつは七五歳になったときに現役のバリバリで吹いていられること。そのときに大事なのは歯と体力ですから。」(静岡県歯科医師会広報誌Vol.3)
歯と唇の形はトランペットを吹く上で重要な要件となりそうである。
・金管楽器の発音シミュレーション
トランペットやトロンボーンの人工吹鳴実験装置が開発され、唇のモデル化とその発音条件が研究されている。トランペットの人工吹鳴の定常音は実奏音と近いとしているものの、上下唇の開口隙間が逆の動向を示し、人工唇の厚さとスティフネスが変化することに依存することをシミュレーションで確かめている。人工唇では実効的にこれらを一定に保つことはできないので発音条件がクリティカルで音色も異なる。又、人工吹鳴実験のシミュレーションでは、パラメータとして、人工唇の固有振動数、吹鳴音圧、唇の厚さを変化させて計算している。それによれば、唇の固有振動数が高くなるにしたがって、高い周波数の音が発生し、唇の固有振動数、吹鳴圧力に伴って、音響管の共振周波数に対応する6つの振動モードが励起されるとしている。また、唇の厚さが増すに従って、周波数の高い振動モードが励起されなくなったり、唇の固有振動数より発振周波数が低くなったり、同じ唇の固有振動数で複数の異なる振動モードが現れるといった傾向が見られる。実際に吹奏する場合は奏者はこれらを上手く調整して所望の発音をしていることになる。マウスピースも大事な要件である。
5.おわりに;金管楽器の吹き易さ、鳴らし易さとは
以上、金管楽器、特にトランペットについて、吹奏系を想定して、奏者にとって吹き易い、鳴らし易い条件を考察した。これらに関する要因は次の吹奏条件区分に分類できるであろう。
(1) 管楽器としての基本要件
(2) 吹き易い為の要件
(3) 大きい音でよく鳴る為の要件
(4) 高度な奏法を満たす要件
ここで、初心者やかって心得のある高齢者にとっては(1)、(2)がそれを支援する要素となるであろう。(2)と(3)は音響管としては二律背反的な要件となる。(3)は(4)の前提条件のひとつである。T型奏者は(1)と(2)を基本に(4)を選択し、K型奏者は(3)と(4)を好んで顔を赤くして吹くのである。好みは音楽のジャンルにもよる。
(楽器創造館 村上和男)
楽器創造館URL;http://gakkisozo.gotohp.com/
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