楽器研究という世界 ・・・・(2)
-(楽器創造館HP:http://homepage3.nifty.com/mikms/より抜粋。)-
2.世界の楽器研究者と研究学会
もっと良い音を発生させるために必要な物理現象を楽器の中で引き起こすことが出来ぬものか、新しい発音原理による楽器は出来ぬものかなどといった目的で楽器を研究の対象とする世界中の研究者の数は一般の人々が思うよりも多いと言えよう。楽器メーカーの会社の技術・開発・研究部門に所属している人々はその職務として当然このテーマに取り組まねばならないので除外しても、大学などの研究機関に所属するか全く個人的に楽器の研究を人生のテーマとしている方々がざっと見て世界中に五百人くらい居るのではないだろうか。その大半が音楽を愛し楽器を科学的に取り扱うことに興味を持つ人たちや研究対象としている楽器のアマチュア演奏家であったりする。
しかしながら、個人で研究活動をしている人はさておき、研究機関に所属する研究者たちを悩ませることのひとつは「貴方が取り組んでいる楽器の研究は本当に世の中のためになるのか」という問いを所属する大学や研究機関当局から受けることであるらしい。このようなチェックを受けることは日本でも世界でも多いという。確かに新エネルギーの開発とか、エレクトロクスの新技術に関する研究などは基礎研究でも応用研究でも世の中のためになると一般的に認められやすい。一方、楽器の研究はその成果があったのかどうかが分かりにくいし、仮にその成果が明確にあった場合でも音楽を創造するひとつの新しい手段が出来たに過ぎないとみなされ、「一般社会への貢献度からすると他に優先すべきテーマがあるはずだ」という疑問を持たれる例が少なくないと聞く。
一方、研究者達は同じ分野の研究仲間との横の連絡を取り合う場にはどんなところ があるのだろうか。日本では音響学会に属する音楽音響研究会、情報処理学会の分科会である音楽情報処理研究会、世界的には国際音楽音響研究シンポジウム(ISMA, International Symposium on Musical Acoustics)、アメリカ弦楽器音響技術協会(CATGUT)、国際コンピュータ音楽学会(ICMC, International Computer Music Conference)などの研究団体がかなり以前から設立されていて、主に大学などの研究機関の人々によって運営されている。
これらの学会に出席してみるとそれぞれ非常に活発に議論が進み参加者の前向きな姿勢に驚かされる。参加している研究者たちは、前述のようにそれぞれの所属機関に戻れば、楽器の研究はマイナーな分野なので少数派グループに属し日常は孤独に近い研究生活を送っている人たちが多い。しかし学会に出席したときは俄然興味を同じくする仲間を得て議論がはずみ元気が出る。内弁慶の反対である。すなわち研究者間で横のつながりを形成せぬことにはとてもやって行けないという宿命的状況にある。昨年春には奈良で国際音楽音響学会ISMA 2004が開催された。参加者は百二十人で、約半数が日本人であった。七十三件の研究発表があり過去の学会に劣らぬ盛況だったので日本側主催者の準備の苦労が報いられたものとなった。次回のこの学会はスペイン・バルセロナで二〇〇七年九月に行われた。
(楽器創造館 永井 洋平)
-- つづく --


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